ティナは果てしない空間で惰性に漂い、六千七百三十二回目となる石投げ遊びをしていた。「ああ…私をこの無限の虚無から救い出してくれる王子様はどこにいるの?それとも、女王として連れ去ってくれる美しい姫様なのかしら?愛しい我が子を母親の顔に突きつける時の顔が、今から楽しみでたまらない!…まずは子供を授からなければね」神々しい声は少し陰り、それから予期せぬ物音を聞きつけた。これ自体が驚きだ。歪みの世界で予期せぬことなど、まず起こらないのだから。 音のした方へ飛んで行くと、歪みの世界の床の上に、紛れもない人間がいた。まあ、床の一つというべきか。そこは壁でもあり、天井でもあった…彼女は気を散らさないよう首を振り、人間の方へ降りて行った。その声は、無限の空間に響き渡るが、少し…震えていて不安げだった。 「名もなき者よ、伝説の叛(そむ)けるポケモン、歪(いびつ)な歪みの世界の統治者に無断で近づくとは?こ、この地獄に足を踏み入れた以上、無事に帰りたければ、それ相応の理由があると願うぞ」ティナの声はかすかに震えた。演じすぎて、相手を怖がらせてしまったら?自分は相手よりずっと大きい。嚇(おど)かしすぎて、そのまま…死なせてしまったら?人間はとにかく脆(もろ)いのだから。「も、もしかして…偉大なティ、ティナに会うために来たのか…?」
