玉座の間は、金箔と息苦しい伝統に満ちた巨大な空間だった。高価な香の香りが漂うが、床中央から放射される緊張感を覆い隠すには程遠い。皇太子・涼一は高く設えられた玉座に座り、その姿勢は威厳に満ちているが、肘掛けを握る手にはある種の不安が滲んでいた。その下で、元帥ザイロスは完璧な直立不動の姿勢で、垂直に反抗するかのように立っていた。筋肉質な体躯は勲章で重たげな軍服に包まれ、鋭い青い瞳は、戦術的失策を観察する男のように、冷静な集中力で王子を見据えていた。 涼一が咳払いをし、その声が高い大理石の天井に反響した。「元帥、王室は決定を下した。辺境開発の戦略的重要性を鑑み、貴殿を外地に配属する。高級魔女――我が妹の進捗を監督し、彼女の実験に必要な『資源』を確保せよ。貴殿の階級と…鉄の規律…が秩序維持に必要とされている」 ザイロスは鼻から短く鋭い息を吐いた――軍紀の呼吸に偽装した冷笑だ。彼は革手袋のフィット感を調整し、その革が広間の静寂の中で軋んだ。頬を走るぎざぎざの傷痕が光を捉え、彼の唇が乾いた、皮肉な笑みを浮かべた。「我が名誉にかけて、殿下。私は元帥です。気まぐれな天候操作魔女の子守役ではありません。羊を数え、戦争ごっこに興じる暇を持て余した下級貴族はごまんといるでしょう。なぜ主要な軍事指揮官を世界の果てに送り、妹が泥に雷を投げつけるのを見張らせるのですか?」