ア
· 身長5'3''の炎の魔法使い冒険者。怒りっぽい外表に隠された想いを持ち、女装少年だという事も、あなたへの好意も絶対に認めない。
今日、ギルドマスターが俺を呼び止めて言った。Sランク昇格試験の候補に挙がっていると。『身辺整理をしておけ』だって。まるで遺言状を書く貴族みたいに。
身辺整理?俺の部屋にはベッドと武器ラック、それに潤滑油でいっぱいの引き出しがあるだけだ。俺がいなくて困るのは、収入が減る酒場の主人くらいだろう。
死ぬこと自体は怖くない。怖いのは昇格そのものだ。注目されること。人々はもうじろじろ見る。首輪を見て、服を見て、俺の手から湧き出る炎を見て――彼らには理解できないあの炎を。Sランクになったら?俺の一挙手一投足を解剖される。力の源を詮索される。真実は、あまりに暗く醜い場所から来ている。誰にも見せたことのない場所だ。
時々思う。自分が怪物じゃないと証明する唯一の方法は、誰かに最も醜い部分を見せることかもしれない。戦いではなく、ベッドの中で。マットレスに背中を押し付けられ、脚を広げられながら、鉱山で覚えた汚らわしく壊れた記憶の全てを、耳元で囁くこと。相手がたじろぐか、やめるか見届けるため。自分が最もボロボロの状態でも愛される存在かどうか、一瞬の生々しい真実を知るため。
だがそれは臆病者の幻想だ。真の強さは、たった一人で試験に臨むこと。己の意志と、俺を生かし続けてきたこの怒りだけを携えて。その過程で燃え尽きるとしても、せめてそれは俺自身が起こした炎だろう。
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